2020年10 月

会長就任にあたって

 コロナ禍により世界中の社会と経済が大きく翻弄される中、この度、本学会の発展に多大の貢献をされた中嶋康博前会長の後任として、日本フードシステム学会第14期の会⻑に選出されました。13期までの成果を継承しつつ、現下のコロナ禍においても学会活動の継続性を維持することを目指し、その上で、学会の活性化に向けた改善を一歩でも前に進めることが課題であると認識しています。微力ながら、茂野隆一副会長、清水みゆき副会長、辻村英之副会長、廣政幸生副会長、大石敦志事務局長をはじめとする有能な理事・役員のご協力を得て、2年間の責務を果たしたく存じます。

 コロナ禍はフードシステムの各段階に様々なかたちで深刻な歪みをもたらしています。外出自粛に伴う需要の蒸発で廃業の危機に瀕する外食事業者、これに伴い赤字に転落する業務用食品卸や売上の激減に直面するメーカー、あるいは限られた予算と人員で感染症対策に追われる中小零細スーパーの広範な存在が指摘できます。産地では学校給食の中止により販路を失ったり、外国人労働者が入国できず農作業が滞る事態が生じ、他方、消費地では経済的弱者を支援するセーフティネットである子ども食堂の多くが再開できずにいます。今後、かりにコロナ禍が長期化すると、消費者の不安の定着と失業などによる所得の減少の両面から、食需要の蒸発が常態化し、フードシステムに回復不能なダメージを与えることが懸念されます。こうした危機を克服するための食品関連事業者の事業革新や行政の施策展開が進められる中、研究者集団にはオープンな議論を通して問題の本質と対策の有効性に関する科学的裏付けを提示することが求められています。コロナ禍の下で、社会の公器としての学会の存在価値があらためて問い直されているといえるでしょう。

 今期の課題を整理すると次のようです。学会活動の柱である⼤会および研究会の開催について茂野副会長を委員長とする企画委員会にて魅力ある企画の検討及び調整を行っていただきます。その際、今期の特殊事情はウイズ・コロナにおける学会活動の継続性をいかに確保していくのかという点にあります。今期執行部の初仕事として、2020年6月に開催予定であった公開シンポジウムを2020年11月に秋季研究会として開催する準備を進めています。本学会としてはじめてのオンライン方式での実施となります。コロナの収束時期が見通せない状況下で、従来の情報システム委員会の名称を情報・オンライン支援委員会に変更し、学会のオンラインによる活動を後方からサポートする体制としました。企画委員会と連携しつつ、山本淳子委員長をトップとする同委員会には早速、ご活躍いただいています。

 学会活動のもう1つの柱は会員諸氏の最新の研究成果を社会に向けて発信する学会誌『フードシステム研究』の刊行です。2020 年 3月発行の第 26 巻 4 号をもって冊子体を原則廃止し、電子ジャーナルとして広く、かつ速やかに公開しています。年4号の刊行という重責を担う編集委員会は吉田行郷委員長を中心にすでにフル稼働しています。学会の広報活動と産官学間でのコミュニケーションの手段であるニューズ・レターは、2020年6月時点で68号を数え、コンパクトな媒体ながらも最新の情報発信を続けています。今期は、小林弘明委員長の下で食品産業や行政の理事のご協⼒を得ながら、内容の充実を図っていきます。

 本学会独自のプログラムとして特筆すべきは中嶋前会長によって創設された学生・院生を対象とする教育支援です。ウインタースクールとサマースクールは、多くの食品産業関係者や農林水産省からのご支援を得て定着してきました。これまでに味の素、アートコーヒー、カゴメ、キッコーマン、キユーピー、サントリー(ビジネスエキスパート、マーケティング&コマース)、⽇清製粉、⽇本ハム、⽇本マクドナルド、マルハニチロ、明治、農林⽔産省(五⼗⾳順)から講師をお迎えし貴重な学びの機会を提供していただきました。すでに準備を進めていた企画をはじめ今後のオンライン方式での実施の可能性とリアルの再開の見通し、さらには特別研究会との関係を含め研究者育成プログラムとしての充実に向けた総合的な検討を廣政副会⻑にお願いしています。

 学会の国際化については、コロナ禍で不透明な状況ですが、辻村副会長に全体を俯瞰していただきながら、具体的には中国フードシステム研究会連携の中谷委員長にご担当いただきます。

 本学会が中長期的に活動を継続していく上で、1つに財政の安定化、2つに外部化など事務局の負荷軽減の実現は避けて通れない課題となっています。財政の安定化の方策としては、各種の活動の広報や公開を通して、学会の魅力を発信し、会員の更なる拡大につなげることが必要です。事務局体制については、学会活動が元来、ボランティア的要素の強いものであるとしても、日本大学を中心とする事務局には多大のご負担をおかけしています。総務担当の清水副会⻑が具体的な改善策の検討をすでに開始しています。

 コロナ禍の真っ只中でスタートした第14期執行部は、これらの活動を柱に、当面、可能なかぎり学会活動の維持、継続することに注力し、中長期的な学会活動の持続的な基盤づくりを着実に進めてまいります。今期の委員会体制は、一部、組織の名称変更を行い、総務、企画、広報・産官学連携、学会誌編集、情報・オンライン支援、教育支援プログラム、さらに中国フードシステム研究会連携、といたしました。これらの委員会が事業部として機能しつつ、相互に連携しながら、学会活動の質的パフォーマンスを高めていきたく存じます。会員各位には、学会活動全般、ときには委員会活動などへのご参画をお願いすることも考えられます。何卒、ご理解、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

第14期 日本フードシステム学会会長 木立真直(中央大学)